女子が好きな色 その10
昔の淡いピンクは、とても火色に及ばない聴色にすぎず、決して楽しい色でも、幸福な色でもなかったわけです。
万葉の時代には、紅の薄染はなぜか浅はかな心に擬えられています。
紅の薄染衣浅はかにあひ見し人に恋ふる頃かも(巻十二)。
あら染めのあさらの衣浅はかに思いて妹が会はぬものかも(巻十二)。
ピンクを表わす伝統色名には紅染の薄い色「退紅」があり、右の歌のように「あら染め」ともいわれる。
そして、次の大伴家持の歌にも見られるように、紅染は華美ではあっても裾せるものであり、変りやすくはかないものの象徴でもあったようです。
紅はうつらふものぞ橡のなれにし衣になほ及かめやも(巻十八)。
花の紅、紅葉の色のはかなさは、しばしば人の心の変りやすさ、世の無情などに讐えられますが、古人はピンクという色に、華やかな紅のかすかな面影を見たのでしょう。